今シーズンの熊本ヴォルターズの成長点 ―ジェフリー・ヒロナカが残したもの―
熊本ヴォルターズの2024/2025シーズンが終わりました。
序盤に3勝15敗と大きく出遅れたものの、中盤以降盛り返し、最終的に27勝33敗西地区4位となりプレーオフにワイルドカード2位で進出、ただPOではA千葉に連敗しB1昇格は叶いませんでした。
序盤のジェフリー・ヒロナカHCの時期の戦い方についてはいろいろ評価があります。ただ、終盤のヴォルターズに近年にない変化が見えており、それはヒロナカコーチが残したものではないだろうか、という考えに至ったのでそれを述べてみたいと思います。
まずは背景の話から。熊本ヴォルターズは予算規模の割に良い外国籍選手を連れてくるるのが上手く、bリーグが始まって以降は8シーズンで6回プレーオフに進出しています。ただシーズン終盤に失速することが多く、また肝心のプレーオフでは決勝に進めたことがないという、肝心なところでの勝負弱さがありました。
その肝心なところでの負け方にはパターンがありました。
ヴォルターズの外国籍選手は、1人でも状況を打開できる超強力なエースです。ウッドベリー然り、ローソン然り、ピーク、J・ハミルトン然り。 ヴォルターズの試合は、シーズンが進むにつれ、終盤の大事な試合のクラッチタイムになると、あるいはプレーオフの大事な試合になると、攻撃はどんどんエース頼りになっていきます。相手チームもエースでくるのが分かっていれば対策をする。常に3人がかりで止められればたとえウッドベリーだってなかなか打開できるものではない。 他の選手ではカバーしきれず肝心の試合で勝てない、というのが負けのパターンでした。
そこで今シーズンのヒロナカHCの戦い方。
そもそもの極端なスモールラインナップがコーチの意図したものだったかは不明ですが、とにかくセンターに速さはあるが、高さ、強さが無いので、日本人選手を含めた選手間の連携がなければインサイドの攻撃の糸口がなく、外から3Pシュートが決まらなければ点が積み上がらないという試合でした。b2レベルでも通用するものではなく、前述のとおり大差で負ける試合が続きました。
その試合展開をみて思ったのが《強度の強い練習試合》を見ているみたいだなあと。
強度の強い練習試合とは、高校の部活が強化のために新体制になる春シーズンとかでよくやる、到底かなわないチームとの練習試合です。私も高校のサッカー部のときに、三菱自工水島や岡山教員団とかと何度も練習試合をやって、ちんちんに負けながらいろいろチャンジをして何かを掴んだり掴まなかったりしたもんでした。
ヴォルターズの序盤はエース外国籍選手以外もチャレンジングなプレーをしないと試合にすらならない試合の連続でした。
20試合を前にして、HCが遠山氏に変わり、センターにエチュニケが参加してからの盛り返しはも前述の通り。その反転攻勢のなかで昨シーズンまでと大きく違うと感じるのは、終盤のクラッチタイムでも日本人選手もしっかり挑戦して結果を残していたこと。山本翔太が3Pに加えてドライブをものしてエースと称されるまでになったこと、安斗夢はもともと3Pが上手かったけど、さらに磨きがかかったこと、蓮のドライブもそう。個人的に一番大きいと思ったのはカツオの3Pの確率がずいぶん上がったこと。今シーズンの熊本ヴォルターズの収穫は日本人選手がまとめて大きく成長したことでしょう。序盤の強度の強い試合が、このあたりの成長の素になったと思われるのです。
ヒロナカHCは、就任時から、大学HCの経験はあるがプロクラブの経験は無く勝負の世界ではどうかという懸念が示されていましたが、逆に育成には実績があり、クラブが彼をHCに招聘したのは、そういう意図だったんじゃないかなと考えている次第です。
熊本ヴォルターズ、最終的には連携の熟成までは至らず昇格までは届きませんでしたが、選手の成長も含めて、今年も応援しがいのあるチームでした。ワンシーズン面白い試合を応援できてありがとうございました。
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