のぞき穴演劇 『PeePingTom』@ 石巻のキワマリ荘【ちょっとだけネタバレあり】
新型コロナCOVID19対策で、1人芝居を観客1人で見るという企画。演者と観客の間には濃厚接触を避けるための仕切りの壁があり、そこにあいたのぞき穴から芝居をみるという安全確保のための装置を、さらに演劇の装置として使う面白い演劇だった。
のぞき穴演劇 『PeePingTom』場所は石巻のキワマリ荘のjugei。
キワマリ荘は石巻の中心街の寿町通りから小さな路地を入った
2階建ての一軒家で
jugeiはその2階の1室。
私が見たのは第2話「Do」(出演:大橋奈央)時間は20分弱。
小さなのぞき穴から見る1人芝居は、登場人物から見られることがないという一方的に見る立場で不思議な感じがした。特権的に見る立場は、登場人物に同化するよりも客観的に眺める傾向がつよくなり、異化作用の強い舞台になっている。
そして、のぞき穴のある壁には、写真がたくさん貼ってあり、写真にはブルーインパルスや東京や石巻の町など、芝居に登場するモノが写っている。こののぞき穴も、他の写真と同じような、壁に貼り付けられた1つの思い出の中をのぞいているのかもしれない。その奇妙な感じも現実感を危うくしている。
一方、芝居は、劇的なことが起きるわけでもない。別れて東京と石巻に離れることになった恋人とのスマホ越しの痴話げんかが特にくぎりなく続いている。その会話の中で「いま居るギャラリーに芸術家が住んでいる」「ゴミに絵を描く芸術家」というこの芝居がこの現実のキワマリ荘が舞台であるという言及があり、虚構ではない日常的なできごとがくりひろげられている。
このいまここの石巻での日常という非常に同化作用の強い芝居が、のぞき穴という非常に異化作用の強い舞台にあるという、この組み合わせが非常に面白く感じた。
構成で感心したのが、のぞき穴の覆いがとられて芝居が始まり(その時、その覆いがスマホの画面であることが知れる)、最後、再びスマホの画面でのぞき穴が覆われ、その画面にスタッフロールが流れて芝居が終わる。石巻の今をここを舞台にした演劇だけどこれはフィクションで、ここで終わりだよとちゃんと終わるうまい構成だ。もしかしたら、こののぞき穴から見ている演劇はスマホの中の思い出を覗き見しているかもしれない、と考えるのはうがち過ぎかもしれないが。
オンラインで各話の背景などを説明するビデオも流れている。最終の第4話が7月26日まで、残念ながら6月末日時点で全日完売とのこと。
【公式サイト】PeePingTom(ウィルチンソン)
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