江戸家小猫師匠を観に行った。 「大須演芸場2月定席 令和5年2月5日 第一部」
小猫師匠が大須演芸場へ出演するということで大須演芸場へ。番組、演目は以下。
- 落語 桂小文三(上方) 桃太郎
- 講談 旭堂鱗林(名古屋) 名古屋コアラ物語
- 漫才 アンダーポイント(名古屋)
- 落語 古今亭志ん雀(東京) 熊の皮
(仲入り) - 落語 林家まめ平(東京) 禁酒番屋
- 落語 登龍亭福三(名古屋) 時きしめん
- ものまね 江戸家小猫(東京)
- 落語 桂塩鯛(上方) 妻の旅行
小猫師匠のネタはラジオやテレビでさんざん見聞きしているが、生の高座で観ると3倍くらい良い。まず、音量。ウグイスの指笛もフクロテナガザルの叫びも、身体にびりびり響くような迫力で惹きつけられる。そして仕草。どうぶつものまねは基本、上半身で完結する芸だけど、小猫師匠は実は鳴き真似に合わせて足元でもかわいい仕草をしている。鳴き声のテンションが上がるのに合わせて右足がきゅっと上がって、鳴き終わるとトンと足を下ろす。ネタの緊張→緩和に、仕草で輪を掛けていて可笑しみが増している。
今回のネタのクライマックスは、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコの鳴き分け(!)。どう鳴き分けているかは実際に体験してください。当代の小猫師匠の特徴は「真面目な人間が真面目に可笑しなことをする可笑しさ」[1]だと思っているのだが、まさにそれをつきつめたような盛り上げかただった。われわれ観客の《信じる心》と、小猫師匠の《折れない心》が試される(笑)ネタであった。
ちなみに3月下旬から5月上旬にかけて小猫師匠の《五代目江戸家猫八襲名披露》(!!おめでとうございます!!)が東京の5つの演芸場で開催されます。
その他、印象に残った芸人さんについてちらほら。
アンダーポイントさん。吉本の名古屋住みます芸人。なんやかや話して、増野に本美が「自分と嫁とどちらを大事か」とつめよる展開になり、決められないという増野に、例え話で「じゃあ、お前の嫁と俺が強盗に誘拐されたとするやろ」「なんで嫁とお前が一緒に誘拐されるねん。あ、お前ら浮気してたんだな。 もしもし、強盗ですか。ふたりとも殺っちゃってください」という風な例え話をエキセントリックに真に取って破綻するというボケを、議論に合わせて交互にくりだしていた。笑い飯の交互ボケをスマートにした形式[2]でとても可笑しかった。
登龍亭福三師匠。圓丈師匠亡き今、日本で唯一のネイテブ尾張弁落語家。東京の時そば、上方の時うどんを名古屋のきしめんにした改作落語。きしめんを褒めるパートで名古屋に関する蘊蓄をちりばめ、甲斐のほうとうとの密かな確執をからめて上手く仕上げたネタだった。
なお、この日は、どういうわけか満員に近い客入りで、高座の芸人さんも普段以上に熱の入った舞台だったように思う。また、番組を見てわかる通り、大須演芸場は、名古屋、上方、東京の芸人が全部楽しめて、実はお得である。また行こう。
【脚注】
[1]対して、先代、先々代の猫八は「いたずら小僧の江戸っ子が真面目な芸をする面白さ」が特徴だと思う。
[2]笑い飯は、ボケの交代の仕方がもっちゃりしているのも笑いの要素なので、この辺は笑いの組み立て方の話。
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