漫才を「誰が誰に話しかけているか」で分類してみた
M-1のナイツの漫才が、片割れが一方的に客に話しかけ続ける漫才のパターンが興味深かったので、「話し手が誰に話しかけているか」の視点で漫才を分類してみたい。
まず漫才として思い浮かぶのがAとBが会話するのを客に見せるパターン。例えばチュートリアルやトータルテンボス。これは判りやすいですね。
今回のナイツは、「Aが客に話しかけ、Bは横から突っ込む」パタン。
ここで、笑芸の会話には<会話/突っ込み>のほかに<常識/ボケ>の対立軸があるということに気をつけたい。
参考→「漫才の型について」
これを考えるとナイツは「Aが客にボケた話しかけをし、Bが常識で突っ込む」パタンといえる。このパタンの漫才師を他にさがすと、まず、爆笑問題。それから少し古いが紳助竜助がそうだ。紳助が客席に向かってとんでもないことを言い竜助がやめなさいとたしなめるパタンは記憶に残っている人も多いだろう。記録を確かめたわけではないがツービートもネタの半分くらいはこのパタンだったと思う。
そして忘れてはいけないのが、延々と客に向かってボケた話しかけをし、横から相方にたしなめられる人生幸朗・行恵幸子。そうかナイツの漫才は人生師匠と同じパタンか。
さて、このパタンで、ボケと常識を入れ替えると、「Aが客に常識的な話しかけをし、Bがボケて突っ込む」パタンとなる。これは例えばオードリーのM-1GP2008の1回目のネタがそうである。他にM-1で探すと、M-1GP2001の中川家の漫才がそうだった。「ボケた突っ込み」が、カワイイお兄さんか憎たらしい春日かの違いで、イメージは正反対になっている。
他のパタンはあるのだろうか。例えば笑い飯。誰に話しかけているかの視点でみると、彼らのいわゆる「ダブルボケ」は、「①Aが客に向かってボケた話しかけをしBが常識で突っ込む②話して交代③Bが客に向かってボケた話しかけをしAが常識で突っ込む」というパタンだ。してみると彼らにはダブルボケというより交互ボケの呼び名がふさわしいかもしれない。
このパタンの漫才師は確かに少ないが、ベテランにもいました。オール阪神巨人。彼らは交互に客相手にボケて、交互に突っ込み合っている賑やかな漫才だ。オール阪神巨人と笑い飯の違いは、前者はそれぞれ自分の持ちネタの全く異なるボケをかますが、後者は1つのテーマを設定し、互いにそのテーマを中心にボケを積み重ねていく点だ。ここが笑い飯の特徴であり強みだ。だから、M-1GP2008の、途中でテーマを変えて一から積み上げるネタは彼ららしく見えなかったのだろう。
以上、「誰に話しかけているか」の視点で漫才をパタン分けしてみた。このパタンを使って似たパタンの漫才を比較すると、その漫才の特徴がさらに浮き彫りにされるような気がするので、今後、もう少し掘り下げてみたいと思う。
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