カテゴリー「笑芸」の記事

2017.11.03

超入門 落語 The MOVIE 『井戸の茶碗』 (NHK総合) 2017年11月2日放送

以前から気にしていた『超入門落語the movie』(NHK総合)ですが、今回の『井戸の茶碗』は、演出が上手くて面白かった。

噺は喬太郎師匠。

高木氏と卜斎の間で清兵衛が右往左往する地の話の時は、ドラマにせず喬太郎師匠を映すとか、ドラマにするところしないところの整理が上手くできている。その中で喬太郎師匠得意のギャグ《「50両もらっちゃいましょうよ」と中間が悪人の顔をして懐にお金を入れる仕草》が、喬太郎師匠の画で、ちょっとアレっと思ったところ、そのテンドンの《清兵衛も悪人の顔をして懐にお金を入れる仕草》のところで、まさかの《清兵衛と中間がシンクロして悪人顔で懐にお金を入れる仕草》とギャグを膨らませてきた(笑)

落語は1人づつの演技なんで《清兵衛が、中間と同じことやる》という繰り返しのギャグになるところに、動作をシンクロしてやるという複数人で演じるドラマじゃなきゃできないギャグの膨らませ方をするという、落語とドラマの違いが良くわかってて、かつ、笑いを良くわかった人がやってるなあという感じであった。

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2017.01.22

超入門落語the movie(NHK総合)

落語をドラマ仕立てで放送しようという試みは何度もあったけど、大概は失敗するか、 笑い話とは別物の感動物語になってるんで、この「超入門落語the movie」 も期待せずに見たのだけど、これが強烈に可笑しい。

新しい特徴は、落語を俳優が演じ直すのではなく、落語家の語りはそのままで俳優は当て振りで演技をするという所。 落語の語りのテンポの良さ、場面転換の早さをそのまま活かした画面が妙に可笑しい。総集編のメイキングで、 俳優が落語家の語りの速度に合わせるのが大変だったと語っていたし、カメラワークが切り返しの時はセリフの度に ぱんぱんアングルが変わって普通のドラマと比べると目まぐるしいくらいである。普通の演劇と比べると落語のテンポはかなり速いようである。

このテンポの良さを残したまま、コミカルなビジュアルを加えたところが勝因ではないだろうか。

「元犬」の裸のおっさんや「紙入れ」の奥さんのビジュアルのインパクトは強烈だったし、 「粗忽長屋」の宿六や「目黒の秋刀魚」の殿様の与太郎な表情がじわっと可笑しい。 「お菊の皿」の、お菊の親衛隊や調子に乗った着飾ったお菊とか実際見てみると改めてバカだねー。

落語の面白可笑しさを紹介する番組として、大成功じゃないかなあ。番組の締めの言葉も良い。

《『なんでい、落語って面白れえじゃねえか』、なあんてもし思っていただけたなら、今度はぜひ寄席に足を運んでみてください。アナタの脳の中に映像が浮かび上がってくるはずです》

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小佐田定雄氏の落語観

林家正蔵の演芸図鑑(NHK総合;2017年1月22日放送)で小佐田定雄氏へ正蔵師がインタビューしてて、その中で興味深い発言があったので、メモがわりの記事。
逐語記録じゃなくて大意です。

(落語の魅力は?)最終的に裏切るから。せっかく作ったやつをいっぺんにボーンと壊すから。 ジグゾーパズルみたいにちょっとずつピースをはめて行って、最後のひとことをポーンといれたとたん、バラバラと壊れてしまう。消えてまうから、登場人物もあまり思いつめない。 愛宕山の「小判を下に忘れてきた」って普通は悲劇です。これが笑いになるのは、嘘でした、思い詰めませんよという芸だから。
(落語は起承転結の結が無いですよね?)そう、嘘でした。はい帰りましょう、ということです。

私の笑芸の分析の中の「落ちの考え方」や、「落語の演技」に通じるところがあるかなと。

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2017.01.20

M-1グランプリ2016の漫才を分類してみた【分析・感想篇】(ちょっとネタバレあり)

M-1グランプリ2016の漫才を分類してみた』の続きです。

全般の印象は、今回のM-1も、会話、漫才芝居、コント漫才それぞれあって、最終決戦もたまたまだろうけど漫才芝居、コント漫才、会話の漫才が1つづつでバランスが良いと感じた。決勝の3組はそれぞれの形式を上手く活用した完成度の高い漫才で、誰が優勝してもおかしくなかったと思う。

個別の感想で、形式的に面白かったのは、スーパーマラドーナのファーストラウンドかな。Aの1人コントをBが芝居の外から突っ込む形式は、下手くそな3人のコントでよくある2人の芝居に1人が芝居の外から解説するのに似てるけど、 サゲのどんでん返し(「エレベーターの中の人数が実は2人きりでなくて3人だった」、「田中は2人目でなく3人目だった」)について、1人芝居の文法とAの芝居が下手なのを上手く逆手に取ったミスリードで、さらに、全くのコントでやると観客に伝えるのに高い演技力が要る所をBのつっこみで解説することでわかりやすくした点で、よく練れた構成だった。 完成度は違うが九十九一のお笑いスタ誕の確か9週目の『殺人家族』に近いものを感じた。
ただ、前半の、Aがコントで可笑しいことをしてBが解説する部分は、 今回はミスリードを醸成するために必要ではあったけど、《下手くそなコントと同じ形式》である分表現が冗長で、笑いがモニョモニョした。

相席スタートも、後半の漫才芝居の《比喩的状況》の言葉を言葉通り《野球のバッターボックスの動作》として演ずる、設定自体がボケた芝居にしてしまった力技は面白かった。ただ、Bのボケた動作へ、Aがボケたつっこみをすることとなったので、全体的な可笑しみはあったけど笑いどころがボヤッとしてしまったのが残念。かといって会話で大いにボケていたAが漫才芝居になった途端に常識でつっこみだすのも不自然だし、どうしたら良いかは難しい。多分、女性のAがそのままボケた野球の芝居をするのが笑い的には正解だろうけど、男女の役割があってそう簡単にもいかない。上手く整理できるともっともっと面白くなると思う。

スリムクラブは、芝居を全く壊さないコント漫才に、Aが通常は漫才芝居で使うようなとんでもないボケをつっこんでくるのに対し、Bがじっと耐えて芝居を続ける構成がジワッと笑える面白い挑戦だった。 しかし、Bが芝居を壊さないつっこみだから、ボケの提示した緊張の解消が弱い欠点がある。その分ボケがどんどんエスカレートするとか、最後に大きく芝居を壊すサゲをいれるとか、もうひと工夫する必要があるなあと感じた。

和牛は正当なコント漫才。芝居を壊さないので緊張がどんどん上がっていって、最後のAがキレて暴れるのが大オチになる。ファーストラウンドも決勝も上手かった。

銀シャリは正当な形式のしゃべくり漫才。AとBの会話でAのボケにBが常識でつっこむがテンションが上がって、非常識なボケのつっこみに変化することで笑いをとった。

スーパーマラドーナの最終決戦のネタは、最初は芝居の中でボケてたのが、だんだん芝居の文法を壊すボケにエスカレートしていく(マゲのカツラが動作とズレる。裏番組から混じって来て切られる。)、漫才芝居の特徴を良く活かした良い笑いだった。

いろいろ書いてみて思ったけど、 まずは、分類をしてみて、漫才芝居やコント漫才をまでボケとつっこみの述語で語ってよいのかはちょっと疑問だった。明白なボケ役はあるにはしても、ここは課題としておく。
また、カミナリや銀シャリなどの《常識のつっこみ》が、だんだん正しさ過剰になって《笑いを上乗せするつっこみ》に変質する(例:「つま弾くな、いたずらに」「ドレミファソラスドって津軽の音階か」「うんちくんのゆるキャラもう下痢やから」)のに何か名前をつけたい。 常識の人間がボケのエスカレーションに引っ張られて狂気に踏み込んで笑いを上乗せする《つっこみ》を、春日(オードリー)のようなボケで笑いを取るとつっこみ区別したい。やっぱつっこみの分類は、述語を整理するためにちゃんと考えてみないといかんな。

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M-1グランプリ2016の漫才を分類してみた

M-1グランプリ2016の漫才を、以前と同様に分類してみました。

記述する項目は以下の(最大)3つ。

下2つについては漫才師のうち向かって左を《A》、右を《B》、観客を《客》とし てこれを表記します。

以下出演順

ファーストラウンド

アキナ
漫才芝居
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。
カミナリ
会話
Aがボケの会話。Bが常識のつっこみ。
AとBの会話
相席スタート
会話/漫才芝居
会話:Aがボケの会話。Bが常識のつっこみ。漫才芝居:Aがボケのつっこみ。Bがボケ。
AとBの会話
銀シャリ
会話
Aがボケの会話。Bが常識のつっこみ。
AとBの会話
スリムクラブ
コント漫才
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。
ハライチ
コント漫才
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。
スーパーマラドーナ
1人コント+解説
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。
さらば青春の光
会話
Aが常識の会話。Bがボケのつっこみ。
AとBの会話。
和牛
コント漫才
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。

最終決戦

スーパーマラドーナ
漫才芝居
Aがボケの会話。Bが常識のつっこみ。
和牛
コント漫才
Aがボケ。Bが常識のつっこみ。
銀シャリ
会話
Aがボケの会話。Bが常識のつっこみ。
AとBの会話。

分析や感想は稿を改めて

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2016.10.06

動物物真似:江戸家小猫

2016年10月1日真打ち競演(NHKラジオ第1)放送

当代の小猫さんのネタをまともに聞くのはこれが初めてじゃないだろうか。江戸家の芸は、 ネタも入れているくすぐりもほぼ同じなのに、やってる人によって可笑しみがこんなに違うのか、という発見があった。

といっても悪い意味ではなく、当代の小猫さんは、生真面目が背広着てあるいているようなそんな話しぶりで 「この動物園づくしと云うのはやればやるほど拍手が小さくなっていくという欠点がありまして」なんて淡々と言っているのが ジワジワと可笑しくて大笑いしてしまったのである。

三代目猫八師匠や先日亡くなられた四代目は、いたずら坊主がからかうような江戸っ子の 茶目っ気が可笑しかったもんだが、同じくすぐりを石部金吉のように演って可笑しくするってのも凄いなあと思った次第である。

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2016.09.22

漫才:飛石連休[ネタバレあり]

真打ち共演 (NHKラジオ第1 2016年4月9日放送)で聞いた漫才。久々に飛石連休の漫才をラジオで聞いたら大変面白かったのでちょっとレポート。

飛石連休は岩見のちょっとテンポが独特のボケが特徴で、今回もそれに藤井が振り回されている。

前半は岩見の「プロ野球と草野球の違いは?」という疑問に藤井が定義を説明する度に、岩見がそれに当てはまらない例を見つけてきては混乱するネタ。昔からやっているネタだけど、エスカレーションが激しくなってて大笑いした

「プロ野球はお金もらってるひと草野球はお金もらえない人」「僕の友達こないだ草野球の助っ人いって2000円貰ってたで」「それはお駄賃やんか。それでご飯たべていける訳じゃないでしょ」「でも帰りファミレス寄ってたで」「1食だけやん。1年間とおしてとか無理やろ」「ならいくら以上がプロなん」「いくらじゃなくて、それでちゃんと仕事としてご飯たべれててるひとがプロ。食べれてない人は草」「じゃ、ぼく居酒屋でバイトしてるから草漫才師という」「いや悲しい悲しい」「ぼくらの事務所、いっぱい草芸人がおるで」で大爆笑。

「草野球やってるグランド、主に土、プロ野球は主に草の上。プロ野球が草野球で、草野球は土野球や。」「足場で名前が決まる訳ではないから」「路上でやるのはストリートバスケやし。ローラースケートとアイススケート足場が違うだけちゃうの。浜辺でやるのはビーチバレー。」「めっちゃあるやんけ、足場で名前が変わるの」「芝生でやるのがグラススキー」「まだあるんかい。足場スポーツ博士か」「‥はい?」のテンポの良い掛け合いも見事。

後半は岩見の居酒屋のバイトの話題から、クレーマーの漫才芝居に入るも、バイトで鍛えた謝罪力で全くボケずに1分演じ切って藤井からメタにつっこまれる所も大笑いした。

ここに上げてないネタも含め15分の間に4つくらいのネタにテンポよく笑いを詰め込んで、とっちらかることなく走りきり見事でした。

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2016.06.05

古今亭文菊独演会(2016年6月4日)

熊本で、お寺で落語会を続けて45年という熊本落語長屋さんが主催する落語会に行って来ました。

会場はいつもは法泉寺というお寺なのですが熊本地震で損傷して使えないということで、今回は専念寺の御好意で開催に至れたとのこと。市電河原町から長六橋をわたって交差点から路地へはいってちょっと、歩いて10分くらいの所に専念寺さんはありました。(実はちょっと道に迷った)会場はお寺の本堂で観客は7、80人くらい。大部分が年配の方ですが中には小学生っぽい子供もちらほら見えます。

文菊師匠の演目は

  • 替わり目
  • 三方一両損
    〈仲入り〉
  • 抜け雀
とスタンダードなところ三席。

お寺の本堂なので観客のすぐ目の前、2mも無い所に文菊師匠が座っているという距離の近さを最大限に利用して、三席とも細かい顔芸が炸裂します。替わり目の酔っぱらいやゼンザイ食いの仕草、三方一両損の吉と金のコメカミをピクピクさせながら啖呵を切る表情、抜け雀の嫌味をいう女将さんの嫌ったらしい表情などなど、よくまあここまで顔が動くものだと感心する表情で爆笑を誘っていました。また抜け雀では亭主の愚痴はほんと囁くような小さな声でつぶやき、絵描きに大声で恫喝されるという対比が可笑しかったです。

開演の主催者口上で、こんな時に落語会を開くべきかどうか一時悩んだが『普段通りのことを普段通りにやることが一番の復興ではないか』と考え開催することにしたとのこと。うん、そうだよなあ。

ところで、替わり目や抜け雀のおカミさんが嫌味をいう時の嫌ったらし仕草をみて『とても古今亭らしいなあ』と思ってしまったんだけど、これは古今亭の誰に刷り込まれたんだろうか。ちょっと思い出せない。

ともあれ、とても楽しい2時間でした。熊本県下の落語情報はここ『熊本落語だより』に詳しいです。

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2016.05.25

漫才 ギャロップ 「新婚さんは大変」(作 金山 敏治)[ネタバレあり]

上方演芸会(NHKラジオ第1 2016年5月15日放送)で聞いた漫才。

ギャロップは林[1]の繰り返す畳み掛けるようなボケが売り物だが、この「新婚さんは大変」はそれに さらに捻りが加わって大爆笑の漫才だった。

ネタは新婚の毛利[2] が義父と呑むことになって、林にその予行演習の相手をお願いするところで漫才芝居に入っていく。

そこですかさず林が「お断りします」と漫才芝居に入るのを拒否。 毛利がなだめすかすと林もやる気をみせると思いきや「お断りします」と繰り返す。「なんでお前とそんなことせなあかんの」と身も蓋もないことを言い出す。このあたりの芝居に入る入らないのギャグでまず大爆笑してしまった。

そこから芝居に入ると林がフィリピンパブで呑んだりトイレの個室で呑んだり、いつものごとく多彩なボケを繰り返す。ここも十分面白いのだが、圧巻が、終盤にさしかるところ。

毛利が「あほなことをいいな」と林につっこんで頭をはたくが「君は、義父の頭をはたくとはなにごとだね」と言い出し林の義父の芝居が終わらず一悶着。なんとか自動ドア(!)が開いて義父の中から林が出てきて収まり、再度しきり直して芝居が始まるが、また毛利がつっこんではたいても林の義父の芝居が終わらなくなり、最後には義母まで出てきてワヤになって終わった。

この下りでは私は腹を抱えて笑ってしまった。

笑芸評論「漫才とコント」の分析で、漫才芝居の長所の1つに、芝居に出たり入ったりができることを挙げているが、ギャロップのこの漫才は、その漫才芝居に入るところと出るところでそれぞれ大きな笑いを作り、かつそれを畳みかけていて、上手い作り方をしているなと感じた次第である。

[1]向かって左。ハゲの方。

[2]向かって右。ふさふさの方。

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2016.05.07

『演劇概論』(河竹登志夫)からのメモ

荷物の中から笑芸と演劇の比較のために十数年前に読んだ本のメモが出てきたので備忘録として記す。なかには既に『落語の要素』『噺家の視線』『漫才師の視線』などに反映できた内容も含まれている。

■演劇の三要素
俳優、戯曲、観客、〈劇場〉
■戯曲とは
対話+舞台書き(場面)+ト書き(動作)
■演劇の古典理論
同化作用と異化作用(ブレヒト)
カタルシス説(アリストテレス)
■(西洋)演劇の分化
科白劇、歌劇、劇的舞踊
■劇文学
■歌舞伎
世界が縦筋、趣向が横筋。これらを綯交ぜにする。
日本の芸は《真》より《美》を優先した。
「なぐさみ」「おもしろさ」
■ ヒュポクリテス
ギリシャ語の俳優。直訳すると「応える人」
円陣の問いかけに応える指揮者アリオン
対話が必須条件
■垂直の演技と水平の演技

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