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2007.02.22

立川談志の上下の切替え方について

先日、たまたま録画していた、NHK-BSの「ハイビジョン特集 立川談志 71歳の反逆児」を見ていたら、談志の上下の振り方が独特なことに気がついた。

マクラではそうでもないのだが、放送された『死神』のクライマックスで、談志の上下の変化が異様に早いのだ。

どこが違うのかと思ったら、上下を振るとき、通常は右向きの人物Aの状態から、首を左へ振りながら演技を変更して左向きの人物Bに成りに行き、向き切ったところで人物の変換が終るのだが、談志の場合、人物Aの状態から、顏がちょっと左に動いた時点で既に人物Bに成り代り切っている。遷移状態が無く演技に隙間が無い。見ている我々はカメラが一瞬一瞬切り替わるような臨場感と緊張感を持ち続ける。

例えば、マッチ棒で作った右向きのチリトリの絵が、棒を1本だけ移動すると左向きになる騙し絵のように、右向きの姿勢がその場でグニャッと変形して左向きになるような変化を、談志の身体がするのだ。談志の演技は上下を「振って」るのではなく上下を「切替」ていると言ったほうが相応わしいように思える。

他のベテランの落語家は、この遷移状態の隙間に対しては、振巾を小さくし、洗練した動作で対応しているが、談志の振巾ゼロの一瞬の切替に比べると緊張感や臨場感が一段落ちる感じがする。

この変形の仕方は、多分、先日、映画で見た甲野善紀の井桁変形に近い動きなのではないだろうかと思っている。井桁変形は、大まかにいうと関節を中心にしたドアスイングみたいな身体の動きをやめて全身を細かく割るように動かして、一瞬で身体の向きが変ったように動くことができるという技である。

談志もマクラや賑やかなネタでは大きく顏を動かして上下を振っているので、緊張感のあるネタのクライマックス用の演出のみ「この技」を使っているのだろうが、知れば知るほど、改めて談志家元の凄さを見る気がする。

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